突然の手術

晴れ朝、いつも通りに起きて、次女や長男を送り出す準備をしていた。 最近、送りだす前に、顔や頭を洗う事にしているので、それらをしていると、家の電話が鳴った。 学校かららしく「教室内で鬼ごっこしてたらガラスに突っ込んだ。 救急車で運ばれる」という内容だった。 この電話が8時くらい。
状況がよくわからないのだけど、どこの病院に運ばれるんだろう。 病院行かなくてはいけないのか。
妻と話して、妻は仕事へ、オレは病院に行くことに。
処置が終わったら、学校へ戻るか、家に連れて帰ってくるか…ということで悩んでいた。
しばらくすると学校から電話。 運ばれる病院がわかったらしい。 これが8時8分。

その病院、駐車場が有料なので、バイクで行くことに。 出発直前にまた電話。 「ガラスの破片が残ってるかもしれないので、手術するかも」という内容だった。 手術? 手術には保護者の同意と保険証がいるらしく、すぐ来てほしいとのこと。 これが8時16分。

すぐに出発。 道が結構混んでおり、途中携帯が2回なった。
一回目は緊急処置室なので、そこに来てほしいと。 これが8時21分。
最後の信号待ちをしてるときに、再び電話がなり、「あとどれくらいで着きますか?」と。 この電話が8時37分。

駐輪場にバイクを止め、救急車の入口から処置室に向かう。
処置室の中に入ろうと、自動ドアを開けたら、中にいた病院の先生が、「外でお待ちください」と。

先ほどから頻繁に電話をくれてたのは、教頭先生で、部屋の前で対面。 簡単に、現在の状態を説明してもらった。 教頭はその場にいなかったし、聞いてないので、どんな状況で事故が起こったのか把握してなかった。
すぐに中に呼ばれて、整形外科の先生から説明を受けた。
「指を触っても全然感覚がないのと、ほとんど動かせないので、太い血管が2本、腱が2本、神経が9本切れてるでしょう」と。 もっと細かい説明があったのだけど、はっきりと覚えていない……
長女と対面させてもらったが、本人はベッドの上に横たわり、右手は血まみれ。 傷を負った場所は、包帯か何かを巻いていて、その上で圧迫するようなもので止血されていた。 ものすごい痛がっており、先生が麻酔を打ってくれるようなのだけど、制服を脱がせないといけなく、脱がせることができないので、切ってもいいか聞いてきた。 切らないとどうにもならないので、切ってもらう事に。 で、「外で待っててください」と。 出際に、「保険証お預かり出来ますか」、と。 こういう時でも、事務的な手続きはあるんだね。
すぐに保険証が返ってきたのだけど、保険証受け取ったというサインを書いてくれ、と。

外で待ってたら、中から長女の「痛い痛い」と泣き叫ぶ声が聞こえてきた…… この声、耐えられないな……

その辺りで妻がやってきた。 教頭先生がオレにした説明と同じ説明を妻に。 整形外科の先生から、もっと詳しい説明を受けていたけど、この場では伝えられず…

しばらくして、また中に呼ばれた。 今度は麻酔科の先生から。
「手術するのに全身麻酔をします。 その注意事項を説明します」と。
通常手術する際は、直前の飲食を禁止して、胃の中に食べ物が無い状態で行うと。 だけど、緊急の場合はそういうわけにもいかず、胃の中に食べ物がある状態で行うので、吐いてしまう事があるかもしれない。 通常だと吐いたものは口から外に出せるのだけど、全身麻酔して意識が無い状態だと、外に出すことができず、そのまま空気と一緒に吸い込み、肺に入ってしまう事があります。 その場合、それが原因で肺炎になる可能性があります。
全身麻酔をする際は、口の中からチューブを入れて、それで呼吸させます。 チューブを入れる際、確実に入るように、口の中に金具を入れて、それからチューブを入れるのですが、金具が歯や唇に当たって、切れてしまったり、歯が欠けてしまったりする場合があります。
また、チューブが喉を通ってるので、術後しばらくは、声がかすれたり、喉に違和感を感じたりするかもしれません。
のような、説明をたくさんされた。
都度言われたことは「可能性はゼロではありません」と。 絶対何も起こらない、という保証ができないので、そのような言い方になるのだろうな。
まぁ同意しないと手術が始まらないわけで、これは同意するしかなかった。

続いて手術の同意。
「血管2本、腱2本、神経が11本、全部で14本繋がないといけないので、一日がかりの手術になるでしょう。 もし血管の長さが足りない場合、血管を繋がないと、血が通わないわけですので、手を切り落とさないといけないかもしれません。 足りない場合は、足の血管を取って、それを繋ぎます。 腱を吻合しますが、しばらくして周りの組織と癒着するかもしれません。 その場合は、後日癒着したものを取り外す手術を行います。 神経も繋ぎますが、繋いだからすぐに感覚が戻ると言うものではありません。 神経の成長は1日1mmと言われています。 腕から指先までだから、数ヶ月以上かかります。 リハビリは専門の理学療法士が行います。 今は右利きなので、左利きになるよう、利き腕の変更が必要です。 手術してリハビリしても、手術前と同じように右手が使えるようには、おそらくならないでしょう…」と。
入院が4週間程度必要らしく、それらの書類一式にサイン。

手術室に移動するまでの間、外に出されて、待っていた。
そしたら、T家の近くに住んでる、H家のお母さんがやってきた。
病院に用があったのか、わざわざ来てくれたのかはわからない。

9時50分くらいから手術が始まった。 ドラマで見る手術室とは違く、部屋の前に「手術中」のランプなどは無かった。 自動ドアを開けた先には、更に手術室がいくつも。

手術中は、入院する病棟の待合室で待つことになった。
公衆電話と自動販売機とイスが置いてあるだけのスペース。
ここで手術が終わるのを待つ。

10時半くらいになって、教頭先生に声をかけた。 「もう帰ってもらって大丈夫ですよ」と。 そしたら教頭先生はどこかに電話して戻ってきた。 「お力にはなれないだろうけど、居させてください」と。 「しばらくしたら校長も来ますので」と。

校長先生は11時半くらいに登場。 校長、教頭、小学校のトップ2と一緒に手術が終わるのを待つ。
T家のお母さんも登場。 パートが休みのようで駆けつけてくれたみたい。

看護婦さんに呼ばれ、手術室にやってきた。
心臓外科の先生から「血管が足りないので太ももの血管を取ります」と説明を受けた。 女の子なので、スカートなど履いた時に見えてしまう、足の下の方よりも、あまり見えない太ももの方が良いとの事。 神経などの安全性も太ももの方が良いと。 太ももには太い血管が何本も通ってるから、1本取ってしまってもほとんど影響ない。 それが原因で走れなくなったり歩けなくなったりすることもないと。 それも承諾するしかなかった。

時間は12時になった。 お昼ごはんの時間。 朝、何も食べずにそのまま出てきたので、すごいお腹が空いている。 先生達に「もうお昼ですし、何か食べてきてください」と言うが、「いいえ、構いません」と動こうとしない。
この場面で、オレだけ食事はしにくい……

1Fに売店があるので、そこにお昼ご飯を買いに。 美味しくなさそうな弁当しかなかったので、先生達の分もとサンドイッチを3つ購入。
待合室に戻り、先生にサンドイッチを勧める。 目の前のテーブルに置くが、全く食べようとはせず。
オレは先に食べ終わってしまった。 もう一度「せっかく買ってきたのですから、食べてください」と勧める。 校長が教頭に「頂いたら」と言ったので、教頭が食べ始めた。 続いて校長も食べ始めた。
こんなサンドイッチじゃとてもお昼ご飯にはならないだろうけど、何も食べないよりはマシだろう。

13時過ぎて、担任の先生もやってきた。
場の空気はすごい重く、誰もほとんどしゃべれない。
そのまま時計は、14時、15時と過ぎて行く。 17時過ぎくらいからだんだんと薄暗くなりはじめた。
18時になり、時間が経過するのがすごい長く感じる。
途中で、何度か先生に「もう帰っていいですよ」と声をかけるが、「終わるまで待ちます」との回答。

19時、20時となる。
ようやく看護婦さんがやってきて「手術が終わるめどがつきましたので、病室のベッドを手術室の前に移動させます。 あと1時間ほどで終わるようです」と。

21時過ぎになって、ようやく手術が終わったと呼ばれた。
手術室へ行き、執刀してくれた先生から説明を受ける。 術中の写真を記録して残しているらしく、それを見せてくれた。
手術前の腕は悲惨だった。 ガラスでここまで切れるか、っていうほど。 刃物で何度も切りつけられたんじゃないかというほど、ひどかった。 これじゃ泣き叫ぶわけだ……
術中の写真も見せてくれて、血管をつないだところがこれ、みたいに説明してくれたけど、気持ち悪すぎて凝視できなかった…
長女は、既に麻酔から覚めており、ベッドの上で「痛い痛い」と泣き叫んでいた…… 痛みどめの座薬を入れてくれるみたいだけど、効くのだろうか……

病室まで運ばれたけど、ずっと泣き叫んでいる…
呼吸器や脈を測る機械や、点滴などをつけられている。
さっき見た画像と、この泣き叫ぶ声を聞いてたら気分が悪くなってきた…

正直、先生達に会わせられる状態ではなかったけど、いい加減帰ってもらわないといけないし…会ってもらう事にした。

担任の先生が声をかけると、一瞬痛みをこらえて会話する。 けど、すぐに泣き叫ぶ…
とりあえず、手術は完了した、ということで先生達は帰って行った。

座薬を入れてもらったが当然すぐには効いてこないので、痛みに耐えてもらわないといけない。 今夜妻が泊まることになったので、オレは家に帰る。
次女と長男はT家に泊まらせてもらえることに。 明日の朝、保育園の準備を持っていくだけでいいな。
バイクは病院に置きっぱなしで、妻の乗ってきた車で帰る。

23時くらいに帰宅して、保育園の準備して風呂に入った。
今日は一日座っていただけなのに、非常に疲れた……