MGC マラソン・グランド・チャンピオンシップ

晴れマラソン終わってから2日目だが、体は非常に痛く倦怠感もひどい。 今週はこれに耐えないといけなさそうだ。
15日に開催された、東京オリンピックのマラソン日本代表を決める選考レースMGCの結果は、なるべくスマホを見ないように、ニュースも聞かないようにしていたため、男子の1位以外の結果を知らない。
なぜ男子の1位だけ知ってるのかというと、これはウルトラマラソンのレース中に知ってしまった。
第12エイドステーション「丹後王国」と、第13エイドステーション「弥栄地域公民館」の間にあった、施設エイドを通過する時の出来事だった。
丹後王国のエイドステーションの先には上り坂が待ち受けていて、その上り坂を下る途中で、前の方に長身の自分と同年代か少し若い6000~6099番台のゼッケンの人が走っていた。
その人が結構軽快に走っていくので、速いなぁと思いながら後を追いかけていたのだが、先の交差点で右折する箇所があって、そこの信号待ちで8人位の集団になって、その中にも含まれていた。
信号が変わったので走り出して、昨日立ち寄った「あしぎぬ温泉」があるのだが、その先の左側にあった施設エイドを通りかかるとき、その人が施設エイドの人に「MGCの結果どうなりました?」と聞いたのだ。
聞かれた男性は見てなかったらしく答えられなかったが「あそこにいるピンクのタオルかけた女の子に聞いてみて、ずっと見てたから」と。 その人は20mくらい前方にいたのだが、その人にも同じように聞いていた。 そしたら女性が「男子の優勝が~○○君で~」とう「○○君」がはっきりと聞こえてしまった…… 続いて「男子の2番目が~○○君で~」というのも聞こえたのだけど、距離が離れていたため「○○君」の部分はよく聞こえなかったけど「くん」と呼んでいたので、中本健太郎選手や岡本直己選手のような、ベテラン選手ではないことは想像できてしまった。

男子のレースを見たのは昨晩だけど、白熱したレース展開だった。 スタート直後の200mくらいから設楽悠太選手がいきなり飛び出し独走体制に。 設楽選手はキロ3分くらいのペースで、続く第2集団はキロ3分10秒くらいのペースで走っていくので、1km毎に10秒ずつ差が開いていく。 キロ3分で最後まで行った場合2時間6分35秒くらいになるので、16年間破られなかった日本記録ペースということになる。
冬でもその記録を16年間も突破できなかったのに、夏のレースで、いきなりそんなハイスピードで突入してくのにビックリした。

MGCでは上位2位までの選手が東京オリンピックのマラソン選手として出場できる。 枠は全部で3枠あり、あと1枠は、今後行われる3つの選考レースで、2時間05分49秒以下を出した選手のうち一番速い選手、該当者がいなかった場合は、MGC3位の選手が内定する。 女子の場合も基準は同じで、タイムが2時間22分22秒以下となる。 つまり、MGC選考レース中に樹立された最速タイムより速いタイムでなくてはならないということ。
女子のタイムでいえば、現在の女子選手でそのタイムはかなり厳しいが、1年に1人くらいは2時間22分台が出ているので可能性はありそだが、男子の場合は日本記録を超えるタイムとなる。 なので塗り替えるのは非常に厳しそうだ。

スタート直後に飛び出した設楽選手は順調に逃げ続け、一時2分以上、600m近い差をつけてトップを独走していた。 だが、徐々に疲れと暑さでペースが落ちてきて、37km付近で第2集団に吸収されるどころか、ついていくことすらできずに、一気に順位が落ちる。
ラスト3kmの争いが、非常に見ごたえがあった。 橋本選手が軽くスパートをかけて先頭に立つ。 だが、すぐに中村選手が左からすごいスピードで抜かしていく。 橋本選手は意表をつかれて、完全に顔が左を向く。 そしたら今度は右側から服部選手がすごいスピードで中村選手を追う。 橋本選手はさらに意表をつかれ、今度は右を向く。 それに大迫選手が追従する。 橋本選手もなんとか大迫選手の後ろについて追いかけていく。 鈴木選手や中本選手、竹野内選手はついていくことができずに脱落していった。
中村選手のスパートは凄まじく、キロ3分12秒くらいだったタイムを、一気に3分00秒くらいまで上げてきた。 しかも上り坂があるなかで。 橋本選手はついていくことができず。 だが、服部選手も大迫選手も歯を食いしばりながらついていく。 解説が「大迫選手がこんなに上半身を揺らしながら走っているのを見たことがない」と言っていたが、それほど大迫選手にとっても厳しい状況で力を振り絞っていたのだな。
そのまま1kmくらい走ったが、大迫選手が服部選手を抜かして2位に。 その勢いのまま中村選手に追いつき、41km地点で1歩だけ前に出た。 服部選手は2秒くらい後ろを走っている。 41km地点を越えて左に曲がり、ゴール前100mの右折を残すのみとなった。 ほぼラストの直線を全力で走っていくが、中村選手にはまだ底力が残っていた。 追従する大迫選手を一気に引き離す。 ラスト400mくらいで軽く後ろを振り返り、着いてこれないのを悟ったか少し余裕になったように見えた。 一方大迫選手は追うが体力の残りが少なく、スピードを落としてしまう。 ラスト400mで服部選手に追いつかれ、必死に追うが差がどんどん開いていく。
2位にはなれない、3位を維持したい、と気持ちが後ろも気になったシーンがあり、大迫選手が後ろを振り返ったのだ。 後ろには4位の選手、大塚選手が走ってるが50mくらいの差がある。
そこからそれぞれの選手が必死にゴールまで走り、中村選手、服部選手、大迫選手とゴール。 中村選手と服部選手の差が8秒、服部選手と大迫選手の差が5秒だった。

思い起こせば、2018年3月に開催された、MGC選考レースの1つ「びわ湖毎日マラソン」のことをブログに書いてるけど、このレースでMGC出場権を獲得したのが中村選手だった。 このレースも3月にしては非常に暑い中のレースで、日本人選手がどんどんと脱落していき、日本人先頭の中村選手ですら、ラスト5kmの地点でMGC出場タイムクリアするのが非常に難しいと思われていた。 ラスト2kmでもその状況は変わらず、もうダメかと思われていた。 だが、ラスト2kmのスパート、特にラスト1kmのスパートは凄まじく、2時間11分00秒以内でMGC出場権を得られるレースで、2時間10分51秒、ギリギリの所で権利を得たのだ。 暑い中のレース、ラスト3kmの争い、そのレースとオーバーラップする部分がある。

3枠目の争いは、指定された3レース「福岡国際マラソン」「東京マラソン」「びわ湖毎日マラソン」のどれかで、日本記録を超えるペースで走らなくてはならない。
びわ湖毎日マラソンは、風の影響を受けやすいのと、例年それほど強いランナーが出ないので、ここで日本記録を出すのはまず無理だろう。 国内で初めて2時間5分台が出た福岡国際マラソン、日本記録も出た東京マラソンが有力だけど、現実的なところだと東京マラソン一択だろうか。 ここで、日本記録を出せる可能性がありそうな設楽選手、井上選手、大迫選手が出るのかどうか。 大迫選手は3位なので、誰も日本記録を出せなかったらオリンピックには出場できるのだけど、自分から取りに行くのか、それとも待ちの姿勢になるのか。
他の選手は日本記録を出す以外に手段が無いので、生半可な覚悟じゃ望めないと思う。 今シーズンのマラソンレースは非常に楽しみだ。


一方女子のレース。 男子のスタートから20分後に開始される。 女子は10名による争いで、選考のルールは男子と同じ。 自分が注目していたのは実業団ではなくプロランナーとして活躍している岩出玲亜選手と、リオオリンピックの選考レース、わずか1秒の差で破れて代表になれなかった小原怜選手。 スタート直後に十八銀行の野上選手が遅れていく。 5kmも走らないうちに岩出選手も遅れていき、10kmすぎで松田選手も遅れる。 松田選手は遅れて、追いつき、また遅れて、というのを何度か繰り返す厳しい走りだった。
25kmくらいまでは一山選手が3分20秒くらいのハイペースで引っ張るのだが、本人の体力が無くなってしまい落ちていく。 そこで前田選手が先頭を引っ張る形になったが、引っ張るのではなく完全に自分のペースで走り出した。 そこで皆がばらけ、30kmの地点では、皆単独走になってしまっていた。 先頭が前田選手、22秒遅れて鈴木選手、さらに28秒遅れて小原選手、さらに29秒遅れて松田選手。 それより後ろは1分以上の差がついている。 その差は40km地点でも変わらず、もう勝負が付いたようなものだった。 前田選手が2時間25分15秒でゴール、だが2位争いが面白かった。 1秒の悔しさを知る小原選手が猛追。 ラスト500mくらいでは10秒くらいの差まで迫っていた。 鈴木選手は迫ってきているのを当然わかっていると思うがスピードが出ない。 ゴールテープ手前、ラストの直線100m、鈴木選手のすぐ右後ろには小原選手が迫っているのが見えた。 が、なんとか鈴木選手が逃げ切り、小原選手は4秒及ばずの3位だった。 1位の前田選手と2位の鈴木選手は3分47秒の差があった。 こんなレースだったので、前田選手は余裕でゴールなのかと思ったが、ゴール直後に動けなくなって、そのまま病院に搬送されてしまったため、優勝インタビューは無しだった。


男女のレースを見たが、誰かが「東京オリンピックは夏のレースなので、スピードが無い日本人でも優勝の可能性がある」とか言っていたが、夏のレースでも冬と遜色ないスピードで走っていいたので、外国人選手もきちんとトレーニングすれば、それくらいで走れそうな気がする。 もちろんオリンピックの時期は、9月よりも暑いのだが、それでも男子で2時間5分台、女子で2時間21分台のレースとか見ることが出来るんじゃないだろうか? 今日のレースも懸念があったのだけど、一番面白くない展開としては、みな牽制しすぎてスピードを出さず、ラスト5kmで30人くらいの集団で、そこからのラストスパート合戦とかになったらやだなぁと。